豊島区の観光名所と街の文化を歩く

豊島区は池袋だけでなく地域ごとの違いを確かめて巡る
豊島区を観光するなら、最初に結論を明確にしておきたい。この街の魅力は、池袋駅周辺の大型商業施設だけを急いで回ることではなく、東池袋の娯楽と文化、南池袋の公園、雑司が谷の寺社と路地、目白の庭園、巣鴨の街道と商店街、南長崎のマンガ文化まで、性格の異なる地域を分けて歩くことで見えてくる。鉄道の結節点、信仰地、旧街道、住宅地、劇場、公園、マンガ文化の施設が近い距離に重なっているため、一日ですべてを詰め込むより、池袋周辺、目白・雑司が谷、巣鴨・駒込、南長崎というように行動範囲を絞る方が、移動に追われず街の違いを確かめられる。開館時間、入場方法、公園の利用状況、寺社の行事は変わるため、訪問前に公式情報を確認したい。
池袋は商業地と文化施設を分けて歩く
池袋駅の出口を決めてから街へ出る
池袋駅はJR、東京メトロ、西武池袋線、東武東上線が集まる大きな駅で、東口、西口、南口周辺では街の性格が異なる。目的地の最寄り出口を先に確かめたい。東口側にはサンシャインシティ、Hareza池袋、中池袋公園、南池袋公園があり、西口側には東京芸術劇場と池袋西口公園がある。駅の反対側へ移動するだけでも地下通路や構内を長く歩くため、午前と午後で東西を何度も往復する計画は効率が悪い。買い物、観劇、食事、水族館など目的を二つか三つに絞り、同じ側の施設をまとめたい。池袋は人通りが多く、週末や公演日、イベント開催日は混雑しやすい。待ち合わせは出口名や建物名まで決めると迷いにくい
サンシャインシティは複合施設として使い分ける
東池袋のサンシャインシティは、水族館、展望施設、プラネタリウム、ナンジャタウン、展示ホール、商業施設、飲食店などが集まる大型複合施設である。かつての記事でよく使われた「地上二百四十メートルの展望台」という表現だけでは、現在の施設内容を十分に説明できない。展望施設はサンシャイン60の高層階にあり、眺望だけでなく、空間演出や休憩、イベントを含む施設として運営されている。サンシャイン水族館は屋上を含む展示空間を持ち、都市の建物内で生き物を観察できることが特徴である。頭上を泳ぐように見えるペンギン展示は象徴的だが、天候や生き物の状態、展示調整によって見え方や公開状況が変わる可能性がある。水族館、展望施設、プラネタリウムを同日にすべて回ると滞在時間が長くなるため、家族連れなら水族館と食事、雨の日なら屋内施設を中心にするなど、目的に応じて選びたい。入場券の販売方法や日時指定の有無は変わることがあるため、当日の公式案内を確認するのが確実である。
Hareza池袋と中池袋公園で劇場都市の現在を見る
池袋駅東口から北東へ進むと、中池袋公園とHareza池袋がある。豊島区立芸術文化劇場は二〇一九年十一月に開館し、公演を鑑賞する場であると同時に、周辺のにぎわいを生み出す文化拠点として整備された。公園の周囲には映画館、区民センター、店舗などが集まり、催事のある日は多くの人が行き交う。池袋をアニメやマンガの街として紹介する場合も、専門店だけを並べるより、劇場、映画、イベント、公園、商業施設が近接している点に注目した方が実態に近い。中池袋公園は休憩場所として利用できる一方、イベント開催時には通常とは動線や雰囲気が変わる。静かな公園を期待する場所というより、文化施設の前庭として人の交流が生まれる場所と考えるとよい。公演を観ない日でも、周辺の掲示や施設案内を見ることで、その時期に行われている舞台、映画、展示の情報を知ることができる。
南池袋と東池袋では公園の役割を比べる
南池袋公園は芝生の利用状況を確認する
南池袋公園は池袋駅東口から歩ける位置にあり、芝生広場、デッキ、遊具、カフェレストランを備える都市公園である。周囲の商業地や寺町と近く、買い物や散策の途中に休憩しやすい。芝生は公園の象徴だが、一年を通して自由に入れるとは限らない。良好な状態を保つために夏芝と冬芝を育て分け、季節ごとに養生期間を設けるため、時期によって全面または一部が閉鎖される。訪問日に芝生で過ごすことを目的にするなら、区の公式ページで開放状況を確認した方がよい。敷物の使用、ペット、ボール遊びなどにもルールがある。公園は午前から夜まで利用できるが、近隣住民や他の利用者と共有する場所であり、大人数で場所を占有したり、大きな音を出したりする使い方には向かない。芝生に入れない日でも、ベンチやデッキから園内を眺め、周辺の寺社や雑司が谷へ歩く起点として利用できる。
雑司が谷では寺社と生活道路を静かに歩く
雑司ヶ谷鬼子母神堂は由緒と参拝の場であることを知る
雑司が谷は池袋東口から徒歩圏にありながら、幹線道路を離れると寺社、住宅、細い道、古い商店が残る地域である。中心となる雑司ヶ谷鬼子母神堂は国の重要文化財に指定され、安産と子育ての信仰を集めてきた。鬼子母神像は一五六一年に現在の文京区目白台にあたる場所で掘り出され、一五七八年に現在地へ堂を建てて安置したと伝えられる。江戸時代には武家から庶民まで参詣し、現在も祈願や年中行事が行われる。参道にはケヤキ並木が続き、境内には樹齢約七百年とされる大イチョウがある。樹木が多いことは魅力だが、「一歩入れば都会の音が完全に消える」と断定するのは適切ではない。参拝者、子どもの声、行事、周辺交通によって雰囲気は変わる。写真撮影だけを目的にせず、堂前では参拝者の動線をふさがず、法要や祈祷が行われているときは静かに行動したい。
上川口屋と参道の店は営業を前提にしすぎない
鬼子母神堂の境内には、江戸時代から続くとされる駄菓子店の上川口屋があり、雑司が谷を象徴する存在として紹介されることが多い。ただし、個人商店や小規模な店舗は、天候、仕入れ、店主の都合などで営業状況が変わる。訪れれば必ず買い物ができると断定せず、開いていれば店の様子を見ながら利用する程度に考えたい。参道や周辺には飲食店、案内施設、地域の店が点在するが、大型観光地のように長い営業時間で多数の店が連続しているわけではない。雑司が谷の魅力は、商品を次々に消費することより、寺社、坂、路地、住宅地のつながりを歩いて確かめることにある。道幅が狭い場所では横に広がらず、住宅や私有地を撮影するときは生活者への配慮が必要である。
雑司ケ谷霊園は著名人の墓だけを探す場所ではない
雑司ケ谷霊園には夏目漱石、竹久夢二、小泉八雲、泉鏡花など近代の文化人を含む多くの墓所がある。文学散歩の目的地として知られるが、霊園は現在も墓参りや管理が行われる場所であり、観光公園とは性格が異なる。墓所を探すときは案内図を使い、区画内へ無断で立ち入ったり、墓石に触れたり、大声で会話したりしないことが基本である。夏は日差しが強く、区画が広いため、飲み物と歩きやすい靴を用意したい。夕方以降は墓所の位置が分かりにくくなるので、明るい時間帯に訪れる方が安全である。著名人の名前だけを追うより、樹木、道の構成、周辺の寺社や住宅地とのつながりを見ると、雑司が谷が長く形成してきた都市景観を理解しやすい。
目白では庭園と住宅地の落ち着きを味わう
目白庭園は小規模な回遊式庭園として歩く
豊島区立目白庭園は一九九〇年に開園した日本庭園で、池、滝、築山、六角浮見堂、数寄屋建築の赤鳥庵などが配置されている。大規模な大名庭園ではなく、住宅地の中で自然と伝統文化に触れるために整備された区立施設である。池の周囲を短時間で歩けるため、長距離の散策が難しい人でも利用しやすい。一方、通路が狭い場所や水際があり、撮影に集中して立ち止まると他の来園者の通行を妨げることがある。春の桜や秋の紅葉は見どころだが、色づきや開花は年ごとに異なり、夜間公開やライトアップも常時行われるわけではない。赤鳥庵は外から眺められるが、部屋の利用や催事への参加には別の手続きが必要な場合がある。入園料、開園時間、休園日、特別行事は公式サイトで確認したい。
巣鴨では旧中山道と信仰の歴史を見る
地蔵通り商店街は昭和だけでなく街道から理解する
巣鴨地蔵通り商店街は「おばあちゃんの原宿」という呼び名で知られるが、高齢者向けの店が並ぶ昭和レトロな通りとだけ説明すると歴史を狭く捉えることになる。通りは旧中山道の街道筋にあたり、江戸時代には日本橋を出た旅人が休む場所が形成された。現在も高岩寺のとげぬき地蔵尊、眞性寺の江戸六地蔵尊、巣鴨庚申塚と結びついた信仰の道であり、衣料品、食料品、和菓子、飲食店、生活用品店などが並ぶ。JR巣鴨駅から商店街入口までは徒歩で向かえ、都営三田線や都電荒川線の庚申塚停留場も利用できる。毎月四の付く日など、縁日や行事の日は通常より混雑することがある。店先を見ながら歩くと速度が落ちるため、通行の妨げにならないよう注意したい。
高岩寺では洗い観音と本尊を混同しない
高岩寺は正式には曹洞宗萬頂山高岩寺といい、一五九六年に湯島で開かれ、移転を経て一八九一年に巣鴨へ移った。とげぬき地蔵尊として信仰される本尊は秘仏で、通常は直接見ることができない。本堂では本尊の姿を写した御影が授与される。境内で多くの人が水をかけて布で洗う像は洗い観音であり、本尊そのものではない。自分の体の気になる部分に対応する場所を洗うという信仰が知られているが、混雑時には順番を守り、長時間場所を占有しないことが必要である。寺院は買い物のついでに立ち寄る観光設備ではなく、祈りと供養の場である。境内の掲示、参拝方法、撮影の注意を確認し、法要中は静かに参拝したい。
南長崎ではトキワ荘の記憶をたどる
トキワ荘マンガミュージアムで戦後マンガ文化を学ぶ
豊島区のマンガ文化を考えるなら、池袋のアニメショップだけでなく南長崎も外せない。豊島区立トキワ荘マンガミュージアムは、手塚治虫、寺田ヒロオ、藤子不二雄、石ノ森章太郎、赤塚不二夫らが暮らした木造アパート「トキワ荘」を題材にした施設である。元の建物は一九八二年に解体されたため、現在のミュージアムは当時の建物そのものではなく、資料や調査に基づいて外観や内部を再現した施設である。この点を区別すると、文化財建築の保存ではなく、マンガ家たちの生活と創作環境を伝える展示施設として理解できる。館内では部屋、共同炊事場、仕事道具、資料、企画展示などを通して、若い作家たちが同じ建物で刺激を受けながら作品を生み出した時代を学べる。入館方法、予約、展示替え、撮影可能範囲は時期によって変わるため、公式案内を確認したい。
豊島区を一日で歩く現実的なモデルコース
池袋の文化と公園を巡るコース
池袋を中心にする日は、午前にサンシャイン水族館または展望施設のどちらかを選び、昼食後にHareza池袋と中池袋公園へ移動し、夕方に南池袋公園または池袋西口公園へ向かう流れが組みやすい。水族館と展望施設の両方を利用する場合は、それぞれの入場時刻と待ち時間を見込み、劇場公演を同日に詰め込まない方がよい。雨天時はサンシャインシティや劇場、映画館など屋内を中心にできる。公園は無料で立ち寄れるが、イベントや芝生養生によって通常の利用ができない場合がある。駅の東西を移動するときは時間に余裕を持ち、最後の食事場所を帰路に使う路線側へ寄せると移動が減る。
目白・雑司が谷の歴史散策コース
落ち着いた街歩きを目的にするなら、午前に目白庭園を見学し、目白駅周辺で昼食を取った後、徒歩で雑司が谷へ向かう。雑司が谷案内処で地図を確認し、鬼子母神堂、参道、大鳥神社、法明寺周辺を巡る。時間と体力に余裕があれば雑司ケ谷霊園まで足を延ばす。庭園、寺社、霊園はいずれも大声で楽しむ娯楽施設ではないため、少人数で静かに歩く日に向いている。坂道と舗装路が続くため、履き慣れた靴を選び、夏は暑さ対策をする。都電荒川線を利用すれば、鬼子母神前から庚申塚方面へ移動し、巣鴨を別の時間帯に組み合わせることもできるが、すべてを丁寧に見るなら別日に分けた方がよい。
巣鴨と都電を楽しむコース
巣鴨では、JR巣鴨駅から眞性寺、高岩寺、地蔵通り商店街、庚申塚へ向かう順路が分かりやすい。寺院を先に参拝し、商店街で昼食や買い物をしながら北へ歩けば、都電荒川線の庚申塚停留場へ着く。そこから大塚駅前、東池袋四丁目、鬼子母神前などへ移動できる。都電は道路状況や混雑で所要時間が変わることがあり、乗車後すぐに目的地へ着く速達交通ではない。車窓と沿線の街並みを楽しむ移動手段として考えたい。縁日の日は商店街が混みやすく、静かに建物や街道を見たい人は日程をずらす選択もある。
誇張を避けて豊島区の魅力を確かめる
豊島区は、池袋の高層建築と娯楽施設、劇場と公園、雑司が谷の寺社と霊園、目白の庭園、巣鴨の旧街道と商店街、南長崎のマンガ文化が近い範囲に共存する街である。だからといって、どの路地も昭和の面影を残し、どの公園も常に静かで、どの庭園も京都の寺院のようだと表現する必要はない。実際には、住宅地には生活音があり、公園には子どもや利用者が集まり、寺社では法要や行事が行われ、商店街は観光客と住民の双方に使われている。その現実を含めて歩くことで、豊島区が単なる繁華街でも、懐古的な下町でもないことが分かる。訪問前に公式情報を確認し、地域ごとの役割と利用者への配慮を忘れず、自分の関心に合わせて範囲を絞ることが、豊島区を楽しむ確実な方法である。